学術英語学会 Japan Society of English for Research (J-SER)

設立趣旨

設立趣旨

近年,大学を中心とする学術研究機関において,英語による国際的発信の要請が著しく高まってきた。具体的には,論文の作成による研究成果の発表,国際学会での口頭発表や討論,海外の研究者との通信,研究者交流等である。このような業務は,過去数十年間にわたり日本の研究者たちに大きな課題として突きつけられてきた。ところが,その重要性にもかかわらず,彼らを支援するための対応は不十分である。

具体的に次の三つの問題点を指摘することができる。第一に,外国語教授法や第二言語習得理論等の展開には目覚ましいものがあり,その知見を大学の英語教育に活用する試みは活発に行われているものの,その目的は基本的に,学生の教育に限定されているという点である。現時点で,研究者のための英語を基調主題とする学会は存在しない。 第二に,研究者養成という役割を担う大学院において,昨今,国際的に活躍できる研究者を養成するという教育目標が盛んに唱えられており,専門科目の講義をすべて英語で行う等の試みがなされているが,専門科目とあわせて英語の学習時間数をどう確保するかという問題が残る。研究者として独立するまでに十分な英語教育プログラムは提供されず,また,独り立ちした後も十分なサポートが得られないまま苦労しているのが日本の研究者たちの実情である。

第三に,一部の学会において特定分野あるいは特定目的の英語教育を推進する活動がなされており,その意義は大きいが,日本の研究者が直面している英語関係の現実的困難に,特定分野・特定目的の観点のみから対応することは困難である。研究領域の多様化,複合化,総合化が進んでおり,また,研究者を取り囲む国際的環境が複雑化する中で,求められる英語運用技能も高度になってきたためである。特定の研究領域(例えば化学,物理学,医学,経済学,社会学,等々)や,個別の技能(ライティング,プレゼンテーション,英会話,等)のみに限定せず,多岐にわたる現実的困難を見据えたうえで,学術英語の研究を促進させ,学術研究者全般を対象とした英語支援の取り組みをすることが望まれる。 上記のような状況を踏まえ,学術英語学会は,次のような趣旨で法人化を行うこととした。

  1. 「研究者のための英語」を主題とする。
  2. 学術英語の研究を促進させ,日本で学術研究活動に従事している研究者を支援することを目的とする。
  3. ここで言う「研究者」とは,主に大学・大学院所属の教員を意味し,他に,企業・非営利団体・公的機関に所属する研究者,大学院博士後期課程在籍学生等を含める。
  4. 英語を主軸として学術研究の諸領域を横断する総合的な視野を持つ。
  5. 研究者相互の知識・見識を深め,「英語の体力づくり」の機会を提供するために,定期的な研究会を開催し目的別の学習会やワークショップ等の企画を立案・実施する。また,学術英語に関する研究成果の発表媒体として定期刊行物を発行し,研究者のために役立つ情報を機関紙等で提供する。さらに,集約した情報を知識リソースとしてインターネット上で公開する。
  6. 本学会の活動は,研究者への学術的サポートだけでなく,大学院等における教育プログラムの展開にも資することを目的とする。
  7. 「研究者のための英語」をめぐる現実の事態に正面から取り組む姿勢を維持する。

以上は営利を目的とするものではなく,日本の大学・大学院等に所属する数十万人の研究者を対象とした学術的な活動である。日本における学術研究者全般の質を高め,ひいては世界の学術研究への貢献を促進することを目的とする。この目的を達成するためには,他の関連団体との連携を深め,これまで小規模に進めてきた活動を組織的かつ継続的に推進することが必須である。本団体はこのたび,さらなる発展の道を広げるために,日本国内の多方面で活躍する多くの研究者に参画を呼びかけ,法人化を行うこととした。

平成26年6月
一般社団法人(非営利) 学術英語学会
設立発起人代表
東京大学大学院 総合文化研究科 教授 トム・ガリー(Tom Gally)
日本医科大学 医学部 教授 﨑村耕二
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