学術英語学会 Japan Society of English for Research (J-SER)

学術英語学会 第4回年次研究大会(ご案内)

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学術英語学会 第4回年次研究大会 (ご案内)終了しました

日時:2018年9月23日(日)10:00~
場所:東京大学駒場キャンパス18号館ホール (東京都目黒区駒場3-8-1)
基調テーマ: 機械翻訳は研究活動に劇的な変化をもたらすか?

プログラム:2018conference-program

ポスター:2018conference-poster

研究発表(午前及び午後)予稿集はこちら→ 20180923_J-SER program final version

プログラム

日時:平成30年9月23日(日)
会場:東京大学駒場キャンパス東京都目黒区駒場3-8-1(京王井の頭線駒場東大前駅)
18号館ホール (一部、18号館4階コラボレーションルーム1,3)

参加費:予稿集代を含む非会員:2,500円会員:1,000円

基調テーマ:機械翻訳は研究活動に劇的な変化をもたらすか?

(9:30~)受付

10:00~10:15 開会の辞・挨拶(会長:トム・ガリー)

研究発表:
10:15~11:55     18号館ホール

11:55~13:00昼休み

講演:
13:00〜13:30「ユーザーから見た機械翻訳の可能性と課題」トム・ガリー
発表と討論:
13:30〜13:40「研究者はどのくらい機械翻訳を利用しているのか?」黒川 智史
13:45〜14:30「機械翻訳は科学論文として容認可能な文章を
産出できるのか?」Law Lok Gi Iris,相吉 晃太朗
14:30〜14:50「MTを使った電子メールのやりとり」戸田博之
14:50〜15:00(休憩)
15:00〜15:30「MTで研究のための情報を収集する
         榊原 知樹,西山 幹枝,トム・ガリー
15:30〜16:00「MTでは人と人の間の交流が変わりうるか?」
         河内山 晶子,梁 晶晶,Wrobel Marcin,川北 麻由,トム・ガリー
16:10〜16:55  自由討論(司会:トム・ガリー)
17:00~17:15閉会の辞・挨拶(学術英語学会代表理事:﨑村耕二)

17:30~  懇親会18号館4階オープンスペース
(参加費  会員・非会員:3,500円)

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一般社団法人 学術英語学会 本部
〒180-0023 東京都武蔵野市境南町1-7-1 日本医科大学武蔵境校舎 外国語教授研究室内
大会準備実行委員会:トム・ガリー(委員長),梁晶晶(副委員長),河内山晶子,Wrobel Marcin

口頭発表も募集いたします。締めきりました。

発表課題(次のいずれかの課題ならば応募可能です。)
(1) 上記基調テーマに係るもの
(2) 当学会の取り扱い細目に関するもの(http://j-ser.org/aboutus/saimoku/)

 

要旨

 

【研究発表】 

 

場所:18号館ホール

10:15-10:45〈発表1〉

題目:機械翻訳の倫理的問題

 

発表者:ヴルーベル マルチン(東京大学大学院総合文化研究科 博士課程)

要旨:機械翻訳(Machine Translation: MT)が非公式な状況で使われるケースが増えてきている。近年、機械翻訳の正確さが増し、ビジネスの状況においても使用可能になってきている。カジュアルな会話に関しては比較的問題は少ないと思われるが、大学内でMT を使用する場合は激しい議論を巻き起こすだろう。本発表では学術コンテクストにおける機械翻訳使用に関する倫理的問題に注目し、以下の三つのケースを紹介する:①宿題や論文を作成する学部生、②論文を書く大学院生、③学術雑誌で論文を掲載する研究者。これら三つのケースを通じて、それぞれの状況における機械翻訳の使用範囲について考察する。

10:50-11:20〈発表2〉

題目:日本美術、特に美術工芸を学術的に翻訳する場合の問題点と今後の方向性について

 

発表者:井谷善惠(東京藝術大学グローバルサポートセンター 特任教授)

要旨:日本美術は長い歴史の中で育まれ、固有の文化や生活と深く関わっているため、翻訳するのに最も難しい分野の一つである。特に工芸においてはそれが顕著である。例えば、漆は“Lacquer”あるいは“Japanese Lacquer”と訳されることも多いが、漆は木の樹液であり、塗料を意味するlacquerとは本来意味が異なる。近年、研究者の間ではurushiという言葉も用いられているが、それでは一般的に伝わらないといわれることも多い。その結果、展覧会や図録でも異なった訳が散見する。そもそも「美術」という日本語が1873年のウィーン万国博覧会でドイツ語より訳された新しい言葉であり、「工芸」という日本語に対する英語訳ですら未だ統一見解をみない。一方、近年特に日本工芸への関心は内外から非常に高く、用語や作品に関する英語訳は必須である。そういった状況を踏まえて、問題点と今後の方向性について論ずる。

11:25-11:55〈発表3〉

題目:英語アカデミックプレゼンテーションの指導方法と自己研鑽システムの開発

 

—英語を母語とする理系研究者からの知見導入に向けて—

発表者:島村 東世子(大阪大学大学院工学研究科 招へい教員)

要旨: 現在,国外のみならず,国内においても英語での研究発表は急激に増加している.グローバルに活躍する若手研究者を育成するために,効果的な英語アカデミックプレゼンテーション教育の開発は重要な課題である.

しかし,現在の英語プレゼンテーション教育には以下3つの問題点が見受けられる.

問題1: 指導の指針,評価の基準,および指導の内容が曖昧である.実証研究に基づいた,確かな指導の基盤が必要である.

問題2:口頭発表の部分のみを対象とした指導になりがちである.質疑応答など,研究発表に関わる一連のスキルを向上させるための,体系立てた英語アカデミックプレゼンテーション教育へ発展させる必要がある.

問題3:英語という言語的側面のみに指導の焦点があてられがちである.専門領域の英語研究 (ESP: English for Specific Purposes) に必須とされる「専門家集団の見解および状況」を反映するために,実際に英語でプレゼンテーションをする研究者達のニーズを明らかにする必要がある.

上記の問題を解決するために,筆者は,先端科学技術分野に従事する理系研究者から得た知見を反映させたプロトタイプ版の「体系的な英語アカデミックプレゼンテーション指導法」を開発した.この指導法は「英語での口頭発表の指導法」と「英語での質疑応答の指導法」の2つの指導法で構成され,各指導法ともに一定の教育効果を有することが検証された.口頭発表部分の指導の指針,評価の基準,および指導内容は,非英語母語話者である理系研究者 107 名から得た知見を反映させた「英語プレゼンテーションの7つの重要要素」を基にして構築された.

質疑応答部分の指導法は,非英語母語話者の理系研究者 7 名に対するグループインタビューから導き出された「英語での質疑応答の段階別目標」を指針として構築された.

本発表では,筆者が構築したプロトタイプ版の「体系的な英語アカデミックプレゼンテーション指導法」の指導内容と教育効果を示すとともに,今後の研究の発展を目指し,英語母語話者の理系研究者 3 名から取得した知見を比較検討し,より教育効果を高めるための指導法や,学習者の自己研鑽システム開発に向けた議論を展開したい.

〈参考文献〉島村東世子 (2017) 『研究発表ですぐに使える理系の英語プレゼンテーション』日刊工業新聞社

 

午後の発表要旨

18号館ホール

13:00〜13:30「ユーザーから見た機械翻訳の可能性と課題」

今までは、研究者が英語などの第2言語を研究活動に利用しようとした時に、その言語の運用が人間によって行われることが大前提となっていた。すなわち、研究者本人がその言語を学んで自分で使うか、翻訳者、通訳者、ネイティブチェッカーなどにその言語の運用を任せる必要があった。しかし、現在は、人工知能の急速な発達に伴い第2言語
運用の一部を機械に委託できるようになった。このシンポジウムでは、人間の本質的能力と考えられてきた言語の運用(特に翻訳や通訳)を機械に委ねる際の可能性と限界について、第2言語を研究活動に使う研究者の立場から追求する。

13:30〜13:40 「研究者はどの程度機械翻訳を利用しているのか?」

本発表では、ウェブ調査で研究者の機械翻訳の使用実態を調査した結果を紹介する。調
査対象者は、主に日本で研究に従事している大学院生、ポスト・ドクター、大学教員と
した。2018 年8 月23 日から9 月10 日までの期間に141 人から有効回答を得た。回答
者の研究分野は、認知科学、心理学、脳科学、第二言語習得、美術史、英文学など多岐
にわたった。結果としては、「あなたは英文の作成などに機械翻訳 (Google 翻訳,
Microsoft Translator, Weblio など) を使いますか」という質問に対して、約67%の回答者
が「はい」、残りの約33%が「いいえ」と答えた。機械翻訳を使用している回答者は
「自分の書いた外国語のチェックのために使う」「外国語で書く文章のベースを作るた
めに使う」「外国語の文を素早く読むために使う」「辞書やコーパスの代わりに機械翻
訳を使う」といった様々な方法で使用しているということが示唆された。一方、「いい
え」と答えた研究者は主に「機械翻訳が(まだ)正確でないと感じる」または「外国語
で書く能力があるため」という理由で機械翻訳を使用していないということを提示した。

13:45〜14:30「機械翻訳は科学論文として容認可能な文章を産出できるのか?」

Law Lok Gi Iris
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 研究生
相吉 晃太朗
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 修士課程

国際的な科学研究の世界における共通言語は英語であり、そのことによって研究者は英語で論文を書くことを余儀なくされている。また、論文の量や質が業績評価の重要な指標であることから、非英語母語話者の研究者にとって英語による論文執筆は負担の大きい課題となっている。このような状況の中、近年、機械翻訳は急速に性能を向上させて
おり、その訳出は英語学習者の書く文章より正確で分かりやすい場合も珍しくない。そのため、科学論文執筆時における機械翻訳の使用が、研究者が論文執筆に対して抱える不安を解消するのではないかと期待されている。しかし、これまでのところ、機械翻訳による訳出が科学論文として容認可能であるかどうかについての調査は行われていない。また、実際に機械翻訳を使用して科学論文を書く際に、研究者が機械翻訳の訳出をどの程度容認するかに関しての知見も得られていない。そこで本発表では、機械翻訳による訳出結果の容認可能性とその容認性判断に影響を与える要因を質問紙や実験調査を通して包括的に考察する。

14:30〜14:50「MTを使った電子メールのやり取り」

戸田博之
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 博士課程

英語圏の研究機関にポスドクとして就職するケースを採り上げ、就職希望研究機関の担当教授にポジション提供の可能性を問うE メールを送ることを想定する。まず、和文Eメールを書きGoogle 社が提供する機械翻訳(MT)ツール Google Translate を使って英文E メールに翻訳、結果として出力された英文E メールを、文法・語彙の正確性は確保できているか、表現しようとした意図が的確に伝わるかという側面から評価する。次にGoogle Translate に入力した和文に対して、語句の順序変更、変換、挿入等様々な操作を行い、訳文がどのように変化するかを見る。発表ではこのプロセスをスクリーン上に投影し、変化を参加者と共有する。 Google Translate を使うことで、「英語を書く」作業をどれほど効率化できるかという点に着目するが、ライティングに対しMT が行いうるその他の貢献や限界などについても考察する。

15:00〜15:30「MTで研究のための情報を収集する」

西山 幹枝
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 博士課程
東京医療保健大学大学院 准教授

トム・ガリー
東京大学 教授

本発表ではリーディングの分野において機械翻訳が研究活動にどのような変化をもたらしうるかを考察する。前半では文系の研究に焦点を当て、文学研究において英語と英語以外の言語が混在する作品テクストを扱う際に、精読すべき箇所を特定する用途で機械翻訳が役に立つかどうかを、英語とラテン語の混淆文を用いて検討する。次に、英語以
外の欧州語で書かれた周辺資料を流し読みして情報を収集する用途における機械翻訳の実用性を評価する。後半では社会科学や理系の研究に焦点を当て、英語で書かれた論文のアブストラクトを Google Translate で日本語に翻訳した場合の訳出を分析・評価する。結果としては、論文のトピックを把握する上では機械翻訳は有用であるが、主題文など重要な内容を正しく理解するにはまだ精度が低いと分かった。以上の考察を通じて、研究者が情報を収集するために文献を読む過程における機械翻訳の有用性と導入時の注意点を多面的に検討したい。

15:30〜16:00「MTでは人と人の間の交流が変わりうるか?」

河内山 晶子
明星大学 教授

梁 晶晶
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 研究生

ヴルーベル・マルチン (Wrobel Marcin)
東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻 博士課程

川北 麻由
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 修士課程

トム・ガリー
東京大学 教授

様々な言語を通訳できる携帯通訳機やスマホアプリが市場に出始めたが、実用的な会話における有用性については不明な点がまだ多い。この発表では、現実的な場面設定でGoogle Translate の無料アプリを使って日本語、英語、中国語、ポーランド語間における、研究者による会話実験の結果を報告する。結果としては、機械通訳は研究者どうし
で利用できる場合もあるが、使う両者が「使いたい」と積極的に思っているという前提条件に加えて、MT 通訳の使い方や特徴を知っておく必要があると分かった。国際会議や海外調査などに通訳の機器またアプリの利用を検討している研究者にとって参考になると思われる。

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